銅版画作家・謝敷ゆうりさんインタビュー
聞き手:Y art gallery 代表 樋口佐代子
━━━埼玉お生まれと伺っていますが、東京郊外の明星大学日本文化学部造形芸術学科を
2009年に卒業されていますが、どのような分野を学習されておられましたか
- 高校の頃までちゃんとした絵を描く事は殆どなかったのですが、3年生の選択授業で銅版画を半年ほど学び、楽しかったので版画のある大学を選びました。大学の造形芸術学科には12のコースがあり、3回生から本格的に専攻するコースを選ぶというカリキュラムで、そこで銅版画にしぼりました。楽しくてハマってしまい、一日中工房にこもって色々な技法を試していました。
━━━2010年から 京都精華大学の大学院で銅版画をはじめられたのですか、
またなぜ精華を選ばれたのでしょう
- 大学の時点では自分の作品に納得がいかない状態であり、銅版画を続けていきたいと思い、大学の2年先輩が精華の院にいて、学ぶには良い学校と奨めてくれたからです。
━━━日本版画協会版画展に2009年より発表されていますが、好きな銅版作家はおられますか
- 大学の卒業制作を出品し、入選しました。以後毎年出品しています。好きな作家は、スロバキアの作家ドゥシャン・カーライの銅版画です。2008年の版画藝術で紹介されたのを見てから、しばらく影響を受けていました。線が自由で美しく、緻密で複雑な画面に圧倒されますが、可愛らしい要素もあってバランスが絶妙なんです。絵本の挿絵も多く手がけている方ですが、私は銅版画作品の方により惹かれました。板橋区立美術館で展示があった時、初めて直に作品を見て衝撃を受けたのを覚えています。
━━━現在制作は、アトリエ凹凸で行っておられますが、日々の制作スケジュールを教えてください
- 昼間は家で版に描画をしています。工房のすごく近くに住んでいて、夜になってアトリエが空いた頃に腐食や摺りをしに行きます。朝になったら帰って寝ます。
- 下絵の段階から細かく描きこんでいて、0.3㎜のシャープペンシルでコピー用紙に描いています。消しゴムをかなり使うのでコピー用紙の方が毛羽立たなくて使いやすいです。
━━━絵の中のモチーフについておたずねします
この数年に制作された作品について、
どのようなイメージをもたれて制作にかかろうとされていますか。
また通底したテーマがございますか
- 現実と虚構、この世に無いものをよく描いています。人の目には見えないものでも動物や虫は見ているかもしれない。人知れずそれが起きているのかもしれない、と想像するのが好きで、それを描き起こしている感じです。
- 見ている人にもその世界に入り込んでもらえるような作品にしたいので、リアリティが出るように細部まで描き込んでいます。それを今後も突き詰めていきたいと考えています。
(右:銅版画作品 「目撃」#01 エッチング 167×130mm 2014)
━━━銅版画でもとめている「画面の肌」マチエールについてお考えを聞かせてください
- エッチングでの硬質な線と点の集積によるドライな質感、解像度の高さにこだわっています。
- 今はハーフトーンも黒ベタも全て点描や線を組み合わせて作っていきます。
- 黒一色でも細かく階調を分けていく事で、鮮やかな画面になるよう心がけています。
━━━影響を受けた、映画、TV、演劇、文学 音楽などについて
- 作品に関して影響を受けた音楽はBauhausやJoy Divisionなどの昔の暗いバンドだと思います。
- 映画は殆ど見ませんが、デヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」のオープニング映像が好きで、新作の「Play-Check-」はそのシーンに着想を得て描きました。
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(左:「Play-check-」 エッチング 248×245mm 2014) (右:「囁き」エッチング 220×195mm 2014)
謝敷さんの作品は、頭の中で考えているイメージを版画独自の表現方法に変えるときに、
強固にこの方法でよいかを思考している粘り強さを感じる。
観る者に手ごわい魅力ある作品を楽しんでもらいたいと思っている。 y art gallery 代表 樋口
謝敷 ゆうり
しゃしき ゆうり Yuri Shashiki
略歴
1985年
埼玉生まれ
2009年
明星大学日本文化学部造形芸術学科 卒業
2012年
京都精華大学大学院芸術研究科
博士前期課程芸術専攻 修了
2011年
高知国際版画トリエンナーレ展
第5回山本鼎版画大賞展
2012年
日本・英国国際版画展 優秀賞
日本版画協会版画展 賞候補
第1回イタリア・日本Artist in Residence
イタリア派遣作家推薦選抜展「はん HAN 版 展」
2014年
浜松市美術館 版画大賞展
日本版画協会 準会員推挙
兵庫県西宮市在住